令和8年度税制改正議論が本格化 基礎控除・NISA・投資減税はどう変わるのか

税理士
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年末に向けて、令和8年度税制改正大綱の策定に向けた議論が本格化しています。
2025年12月、自民党税制調査会では小委員会が相次いで開かれ、所得税、法人税、相続税、地方税まで幅広いテーマが俎上に載せられました。

今回の改正議論の特徴は、単年度の調整にとどまらず、物価上昇が常態化する社会や、投資立国を目指す政策の方向性を前提に制度を見直そうとしている点にあります。
本稿では、一般の生活や家計とも関わりが深い論点を中心に整理します。

物価上昇を前提とした基礎控除の見直し議論

今回の議論で特に注目されるのが、所得税の基礎控除などを物価に応じて見直す仕組みです。
現行制度では、基礎控除の本則は58万円と固定されていますが、物価が上昇する中で控除額が据え置かれると、実質的な税負担は徐々に重くなります。

財務省が政府税制調査会に提出した資料では、
基礎控除などをどの程度の頻度で見直すのか
どの経済指標を基準に調整するのか
という2点が論点として示されました。

これは、いわゆる年収の壁問題とも重なり、給与所得者を含めた広範な納税者に影響するテーマです。

NISAのさらなる充実が政策課題に

所得税関係では、NISAの一層の充実も政策的問題として位置づけられました。
具体的には、つみたて投資枠における対象年齢などの見直しが検討対象とされています。

これは、若年層から高齢層まで、より幅広い世代が長期的な資産形成に参加しやすくする狙いがあると考えられます。
貯蓄から投資への流れを、税制面から後押しする方向性が改めて確認された形です。

高校生世代の扶養控除は結論先送り

高校生世代の扶養控除の見直しについても議論が行われましたが、今回の改正で結論を出すことは見送られ、令和8年度改正以降に結論を得るとされました。

教育費負担と税制の関係は、家計への影響が大きい分野です。
今後の議論の積み重ねが注目されます。

住宅ローン減税と金融所得課税の位置づけ

住宅ローン減税についても、政策的問題として検討対象に含まれています。
これまで延長と修正を繰り返してきた制度だけに、今後は制度全体の整理や方向性の明確化が求められる局面に入りつつあります。

また、金融所得課税の一体化については、長期的な検討課題とされました。
直ちに制度が変わる段階ではありませんが、将来の税制改正を考えるうえで重要なテーマです。

法人税は設備投資と研究開発支援が焦点

法人税分野では、経済産業部会から要望されていた大胆な設備投資促進税制が、政策的問題として検討されることになりました。
戦略技術領域型とされる新たな枠組みでは、研究開発投資の拡大や、大学などとの産学連携を促進することが想定されています。

一方で、研究開発税制のインセンティブ効果については疑問視する声もあり、単なる拡充ではなく、実効性が問われています。

中小企業向けでは、少額減価償却資産の特例について、拡充や適用期限の延長が検討されています。

事業承継税制と地方税の課題

相続税・贈与税分野では、法人版および個人版事業承継税制について、承継計画の提出期限延長が検討対象となりました。
後継者不足が深刻化する中で、制度の使いやすさが引き続き課題となっています。

また、地方税では、東京都に税収が集中する構造的な問題も議論されました。
特に法人事業税の資本割において、都の税収シェアが高い水準にあることをどう捉えるかが論点として示されています。


結論

令和8年度税制改正に向けた議論は、家計、企業活動、地方財政といった複数の分野を横断する内容となっています。
中でも、物価上昇を前提とした基礎控除の見直しや、NISAの拡充は、今後の生活設計や資産形成に直結する重要なテーマです。

今回の議論は、短期的な負担調整にとどまらず、日本の税制をどの方向へ導くのかという中長期的な視点を含んでいます。
今後の大綱決定や法改正の動きを注視しつつ、自身の家計や事業への影響を考えていくことが求められそうです。


参考

・税のしるべ(2025年12月5日)
 自民税調が8年度税制改正大綱に向け議論、政策的問題など


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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