与野党公約が分配一色になる衆院選――消費税と財政規律はどこへ向かうのか

政策

衆議院が解散され、短期決戦の選挙戦に突入しました。今回の衆院選で目立つのは、与野党を問わず消費税減税を掲げ、家計支援を前面に出した「分配一色」の公約が並んでいる点です。
一方で、円安と長期金利上昇が同時に進み、財政悪化への懸念が市場で強まっているにもかかわらず、財政健全化の道筋を正面から語る政党は多くありません。
本稿では、今回の選挙における消費税減税公約の特徴と、その裏側にある財政・市場との緊張関係を整理します。


消費税減税が「横並び」になる異例の選挙

今回の衆院選では、主要政党の多くが何らかの形で消費税減税を掲げています。
自民党と日本維新の会は、食料品の消費税を2年間ゼロとする方針を打ち出しました。もっとも、自民党は「国民会議で検討を加速する」と表現を抑え、開始時期や財源を選挙後の議論に委ねています。
野党側では、恒久的な食料品ゼロ税率を掲げる新党や、消費税率そのものを5%へ引き下げる案、さらには将来的な廃止を訴える主張まで幅があります。
注目すべきは、消費税減税の是非そのものが争点になりにくくなっている点です。減税に慎重な立場を取ること自体が、選挙戦では不利になりかねない空気が広がっています。


「鬼門」としての消費税と政治の記憶

消費税は、これまで幾度となく政権の命運を左右してきました。導入時や税率引き上げ時に、選挙で厳しい審判が下された歴史は、政治の側に強く刻み込まれています。
その結果、選挙のたびに消費税は「触れにくいテーマ」となり、増税はもちろん、現状維持ですら説明責任を伴う課題となってきました。
今回の選挙で与野党がそろって減税を掲げる背景には、こうした政治的トラウマと、有権者の生活不安への即効性を重視する判断があると考えられます。


財源論の薄さと「先送り」の構図

消費税減税で最も問われるのは、代替財源です。
しかし、多くの公約では「基金の活用」「政府系ファンドの創設」「外為特会や日銀保有資産の活用」などが列挙されるにとどまり、恒常的な財源としての持続性は明確ではありません。
とりわけ、恒久減税を掲げながら、恒久的な歳出削減や税体系全体の見直しに踏み込まない点は、財政運営上のリスクを残します。
結果として、選挙中は分配を強調し、財政の調整は「選挙後に議論する」という先送り構図が、今回も繰り返されているように見えます。


市場はすでに警鐘を鳴らしている

政治の空気とは対照的に、市場は敏感に反応しています。
長期金利は27年ぶりの水準まで上昇し、消費税減税と歳出拡大が同時に進めば、財政悪化が加速するとの見方が広がっています。
政府は債務残高GDP比の低下を重視すると説明しますが、その前提には潜在成長率の大幅な上昇があります。現実の成長力との乖離を指摘する声も強く、試算の信頼性自体が問われています。
市場が警戒しているのは、単年度の赤字そのものよりも、「歯止めが見えないこと」です。


分配と財政規律は両立できないのか

消費税は、社会保障を全世代で支える安定財源という性格を持っています。景気変動に左右されにくい点は、法人税や所得税にはない強みです。
本来、家計支援を重視するのであれば、給付付き税額控除や社会保険料負担の見直しなど、よりターゲットを絞った政策も選択肢になります。
減税か、分配か、財政規律か、という二者択一ではなく、どの負担を誰がどの程度担うのかを丁寧に示すことが、政治には求められているはずです。


結論

今回の衆院選は、消費税減税が「争点にならない」という点で、異例の選挙となっています。
分配を重視する姿勢自体は理解できますが、財政健全化の目標と道筋を語らないままでは、市場との緊張は高まり続けます。
選挙後に待っているのは、減税の是非そのものではなく、「誰が、どのように、そのツケを引き受けるのか」という現実的な議論です。
有権者にとっても、目先の負担軽減だけでなく、その先にある財政と経済の持続性を見極める視点が、これまで以上に問われていると言えるでしょう。


参考

・日本経済新聞「与野党公約、分配一色 乏しい財政配慮」
・日本経済新聞「財政健全化、道険し 26年度8000億円赤字試算」
・日本経済新聞「『鬼門』の消費税、争点回避」
・日本経済新聞「増税時に敗北の歴史」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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