不動産クラウドファンディングは安全か――不特法商品の見極め方

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少額から不動産投資ができる手段として、不動産クラウドファンディングが広がっています。マンション1室など特定の不動産に数万円から投資でき、利回りも比較的高く見えるため、家計の資産形成の選択肢として注目されています。
一方で、分配金や元本の償還が遅れる事例も報じられ、仕組みや事業者の見極めが重要になっています。本稿では、不動産クラウドファンディングの中核である「不特法商品」の仕組みと、投資判断で注意すべきポイントを整理します。

不特法商品とは何か

不動産クラウドファンディングの多くは、不動産特定共同事業法に基づいて組成されています。これは、事業者が投資家から資金を集め、その資金で特定の不動産を取得・運用し、賃料収入などを分配する仕組みです。
運用期間終了時には、不動産を売却し、その売却代金を原資として元本を返すのが一般的です。株式投資のように市場で売買するものではなく、あらかじめ運用期間や対象不動産が定められている点が特徴です。

トラブルが起きやすい商品の共通点

近年、分配金や償還金の支払いが遅れるファンドが複数確認されています。こうした案件には、いくつかの共通点があります。

第一に、募集時に10%前後といった高い利回りが示されている点です。不動産投資の収益は、賃料収入を基礎とするため、一般に株式ほど高いリターンにはなりにくい構造です。高利回りを強調する案件ほど、裏側にリスクが潜んでいる可能性があります。

第二に、資金の流れが分かりにくい点です。グループ会社が複数関与している場合、不動産の取得価格や賃料の支払い原資が見えにくくなることがあります。投資家にとって重要な情報が十分に開示されていない場合、慎重な判断が求められます。

第三に、運用中の情報開示が不十分な点です。不動産の開発状況や運営状況が定期的に示されない場合、問題が顕在化するまで投資家が気づけないことがあります。

業界団体による自主規制の動き

こうした課題を受け、不動産クラウドファンディングの業界では、自主規制の整備が進められています。50を超える事業者が参加する一般社団法人不動産クラウドファンディング協会では、情報開示や管理体制を強化するためのルール作りが検討されています。
募集時に事業者が開示すべき内容をチェックリスト化し、対象不動産の現況写真、取得価格や想定売却価格の妥当性など、20~30項目程度を盛り込む方針とされています。これにより、投資家が比較・検討しやすくなることが期待されます。

投資判断で重視すべき視点

不特法商品は、本来、対象となる不動産が明確である点に強みがあります。利回りの数字だけを見るのではなく、事業者の実績や財務体制、情報開示の姿勢を確認することが重要です。
また、運用期間中にどのような情報が、どの頻度で開示されるのかも確認しておくべきポイントです。透明性の高い事業者ほど、投資家との信頼関係を重視する傾向があります。

結論

不動産クラウドファンディングは、家計の資産形成において有効な選択肢となり得ますが、「高利回り=安全」ではありません。不特法商品の仕組みを理解し、事業者や不動産の情報を丁寧に見極める姿勢が欠かせません。
利回りの数字に惑わされず、透明性と説明責任を重視することが、長期的に家計を守る投資判断につながります。

参考

日本経済新聞「<家計のギモン>不特法の商品、事業者見極め」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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