三菱UFJがMMFを10年ぶりに復活へ 金利上昇局面で広がる「安全資産」の新たな選択肢

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国内の金利が長くゼロ近辺で推移してきた結果、預金を中心とした資産管理が続いてきました。しかし、ここ数年の金利環境の変化を受け、安全性と利回りの両立を求める動きが再び強まっています。こうした潮流の中で、三菱UFJフィナンシャル・グループがマネー・マネージメント・ファンド(MMF)の販売を復活させる方針を明らかにしました。
MMFはかつて20兆円超の巨大市場を形成した金融商品ですが、低金利下で魅力が薄れ、2016年のマイナス金利導入以降は姿を消していました。それが10年ぶりに復活するというニュースは、金利上昇という大きな環境変化の象徴といえます。

本稿では、MMF復活の背景、商品としての特徴、家計や企業にとっての意味、そして今後の投資環境への示唆について整理します。

1 MMFとはどのような商品か

MMF(Money Management Fund)は、短期国債や短期社債、CPなど、安全性の高い短期金融商品で運用される投資信託です。値動きが小さく、換金性が高いことから「ほぼ元本割れしにくい運用商品」として位置づけられてきました。
預金に比べると安全性は完全ではないものの、一般的にはローリスク運用の代表格として認識されています。

2000年前後には純資産総額が20兆円を超え、多くの個人投資家に利用されましたが、その後は低金利政策の長期化で利回りが低下し、存在感を失っていきました。


2 なぜ“今”MMFが復活するのか

今回の復活の最大の理由は、金利上昇により運用妙味が再び生まれたことです。

  • 預金金利:平均0.2%前後
  • MMF想定利回り:0.5%近辺の可能性(現時点の金利水準を前提)

超低金利時代には、MMFと預金の利回り差がほとんどなく、商品の魅力が低下していました。しかし、現在は国債金利が上昇しており、安全性を確保しつつ預金より高い利回りを期待できる環境が整い始めています。

加えて、デジタルチャネルが普及したことも追い風です。これまで金融商品へのアクセスが限られていた層にも、より簡便にMMFを利用してもらえる可能性があります。
三菱UFJアセットマネジメントは、今回のMMFを数年以内に3000億円規模へ育成する方針を示しており、一定の需要を見込んでいることがわかります。


3 預金とMMFの違い

MMF復活のポイントを理解するためには、預金との違いを整理することが欠かせません。

項目預金MMF
元本保証あり(預金保険の範囲内)なし(ただし運用は低リスク)
利回り低い市場金利に応じて変動、預金より高い傾向
運用対象銀行の貸付等国債・社債・CPなど
換金性高い高いが、一定の制約がある場合も

MMFは元本保証ではありませんが、安全性の高い債券中心のため、資産価値が大きく変動することは稀です。
その一方で、預金のような保険制度による保護がないため、投資商品としての性質を理解したうえで利用することが必要です。


4 「低リスク運用ニーズの高まり」という社会的背景

MMF復活の背景には、金利上昇に加えて、家計行動の変化があります。

  • インフレが定着しつつあり、現金の実質価値維持が課題になっている
  • NISAやiDeCoの拡充によって投資への関心が高まってきた
  • しかし、高リスク資産には踏み切れない層が依然として多い
  • 安全性を保ちつつ少しでも利回りを得たいというニーズが再浮上

こうした層にとって、MMFは「預金以上、投資未満」の中間的な選択肢として機能します。特に資産形成を始めたばかりの層にとっては、リスク許容度を確認しながら運用に慣れるステップとしても活用される可能性があります。


5 三菱UFJの狙いと金融業界への影響

今回の復活は三菱UFJフィナンシャル・グループが先陣を切りましたが、今後は他行・他社にも波及する可能性があります。理由は3つあります。

  1. 金利が高止まりする場合、MMFの運用利回りも期待できる
  2. 金融機関としては、低リスク商品でも手数料ビジネスの幅が広がる
  3. デジタルチャネルの利用拡大により、販売コストが抑えられる

銀行はこれまで、預金の大量流入で収益性が低下しやすい状況にありました。MMFの販売が再開されることで、顧客の資金を「預金以外の安全資産」で囲い込む戦略が取りやすくなります。


6 家計はどう向き合うべきか

MMFは安全性と利回りのバランスがよく、家計にとって使いやすい商品ですが、次の点に注意が必要です。

  • 元本保証はない
  • 金利変動により利回りは上下する
  • 信託報酬(コスト)の水準を確認する必要がある
  • 市場ストレス局面では一時的に基準価額が下落する可能性がある

この特性を踏まえたうえで、次のような使い方が考えられます。

  • 普段は預金で管理している生活防衛資金の一部を、換金性を維持したまま運用したい
  • 定期預金より柔軟性を高めたい
  • NISAや積立投資に充てる前の待機資金を置く場所として活用する

特に最後の「待機資金の置き場」としての活用は、海外でも一般的な使い方であり、日本でも広がる可能性があります。


7 「金利環境の変化」は投資行動をどう変えるか

MMF復活のニュースは、単なる商品再開にとどまらず、以下のような広い文脈を示しています。

  • 日本も「金利がゼロではない時代」に戻りつつある
  • 安全資産にも選択肢が生まれ、運用余地が広がり始めている
  • 家計が預金中心から分散運用へ進む流れがより明確になる可能性
  • 金融機関のビジネスモデルにも変化を促す

長らく「預金しか選択肢がない」状態だった日本の資産運用は、金利上昇を契機として新しい段階に入りつつあります。
その象徴のひとつがMMFの復活といえるでしょう。


結論

三菱UFJフィナンシャル・グループがMMFを10年ぶりに復活させるという動きは、金利環境の変化を背景に、安全性と利回りの両立を求める家計ニーズが高まっていることを示すものです。
MMFは低リスク資産としての役割が期待でき、預金だけでは対応しきれない運用ニーズを補う選択肢となります。

元本保証こそないものの、短期債中心の運用という性質から安定感があり、インフレ下の資産管理において存在感を持つ可能性があります。
今後の金利動向や金融機関各社の対応も含め、日本の資産運用環境が変化していく兆しとして注目されます。


参考

日本経済新聞「三菱UFJ、MMF復活」2025年12月5日
(内容を参考にしつつ、加筆・補足して構成)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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