「ドルスマイル」が曇ったまま、笑顔が戻らない。
そんな“長引くドル安”のとき、家計の資産はどう守るか?
今回は、新NISAでの実践的リバランス法を解説します。
🧭 1. ドル安シナリオを整理しよう
ドル安とは、相対的に円や他の通貨が強くなること。
たとえば、1ドル=150円から130円へ円高が進むと――
| 保有資産 | 為替影響 | 家計への影響 |
|---|---|---|
| 米国株・米国ETF | 円換算で評価額が下がる | 含み損リスク増加 |
| 外貨預金 | 円ベースで減る | 利息収入は維持 |
| 輸入品・海外旅行 | 円高で割安に | 家計負担は減る |
| ゴールド(金) | ドル建て価格は上昇しても円高で相殺される | 上昇幅が限定されることも |
つまり、米国資産を多く持つ人ほど、円高(ドル安)に弱くなるのです。
💡 2. NISAポートフォリオの考え方を変える
🔁 リバランスとは?
資産の配分(比率)が目標からズレたときに、
元の比率に戻すことを「リバランス」と言います。
たとえば前回のモデル(毎月10万円、米国株40%など)を基準にすると:
| 資産クラス | 初期比率 | 為替変動後 | 修正後の目標 |
|---|---|---|---|
| 米国株 | 40% | 33%(ドル安で下落) | 35%に戻す(買い増し) |
| 為替ヘッジ米国株 | 15% | 16% | 15%維持 |
| 全世界株 | 20% | 22% | 20%に戻す |
| 金 | 10% | 12%(安全資産買いで上昇) | 10%に戻す(売却調整) |
| 日本株 | 10% | 11% | 10%維持 |
| 現金 | 5% | 6% | 10%に増やす(次回の買い増し余力) |
👉 ポイント:下がった米国株を少し買い増し、上がった資産を少し売る。
これで“安く買って高く売る”が自然にできる仕組みになります。
📊 3. 円高・円安それぞれのシミュレーション
【A】円高(ドル安)シナリオ:1ドル=130円
| 資産構成 | 為替影響 | 評価額変化(円換算) |
|---|---|---|
| 米国株(S&P500) | -13% | ▼40万円 → 35万円 |
| 為替ヘッジ米国株 | ±0% | 15万円維持 |
| 金ETF | +5%(ドル上昇を相殺) | 10万円 → 10.5万円 |
| 日本株 | +3% | 10万円 → 10.3万円 |
| 全世界株 | -5% | 20万円 → 19万円 |
| 合計 | ▼95万円 → 約90万円 |
➡ 評価額は約5%減。ただし「ヘッジ資産+円建て」でクッションが効く。
【B】円安(ドル高)シナリオ:1ドル=160円
| 資産構成 | 為替影響 | 評価額変化(円換算) |
|---|---|---|
| 米国株(S&P500) | +15% | 40万円 → 46万円 |
| 為替ヘッジ米国株 | ±0% | 15万円維持 |
| 金ETF | +8% | 10万円 → 10.8万円 |
| 日本株 | -3% | 10万円 → 9.7万円 |
| 全世界株 | +6% | 20万円 → 21.2万円 |
| 合計 | 約95万円 → 約102万円 |
➡ 円安では評価益が増えるが、円ベースの生活コストが上がる可能性も。
🧩 4. 為替ヘッジの使い方 ― “半分ヘッジ”がちょうどいい
為替ヘッジは、為替変動の影響を抑える機能。
ただし、ヘッジコスト(金利差分)がかかる点に注意。
- 完全ヘッジ型:円高時に有利だが、円安では上昇を逃す
- 無ヘッジ型:円安時に有利だが、円高では損をしやすい
👉 そこで現実的なのが、「半分ヘッジ」という考え方。
| タイプ | 商品例 | 比率(目安) |
|---|---|---|
| 無ヘッジ | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 50% |
| ヘッジあり | 野村インデックスファンド・米国株式(H型) | 50% |
これで、為替がどちらに振れても“痛みが少ない”バランスになります。
🪙 5. ゴールドと円資産の役割
- 金(ゴールド):通貨が同時に弱くなったときの保険
- 円資産(預金・国内株):生活費と連動する“基礎の安心”
為替リスクを減らすとは、
「予想する」ことではなく、「複数の資産で備える」ことです。
🧮 6. リバランスのタイミングとルール
- 📆 年1〜2回(例:6月・12月)を目安に点検
- 💬 ズレ幅5%以上で調整(例:米国株が40%→34%になったら買い増し)
- 💸 新NISAの成長投資枠を利用して買い増しすれば、
売却益課税も気にせずリバランスできます。
🧭 まとめ ― “為替の波に溺れず、乗る”
ドルが笑わなくても、
家計の資産は「リバランス」という舵取りで笑顔を守れる。
為替を当てにいくより、配分を整える。
それが、長い人生の資産設計における本当の“スマイルライン”です。
📘 出典:2025年10月23日 日本経済新聞朝刊「株最高値圏でも『笑えぬドル』」
💬 参考:バンク・オブ・アメリカ ファンドマネジャー調査(2025年9月)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
