メガソーラー補助は役割を終えたのか― 上乗せ補助廃止が示す再エネ政策の転換点 ―

FP

政府・自民党が、地上設置型の事業用太陽光発電、いわゆるメガソーラーを対象とした売電価格への上乗せ補助を、2027年度にも廃止する方針を打ち出しました。
再生可能エネルギーの普及を後押ししてきた支援策が転換点を迎えつつあります。

この見直しは、単なる補助金削減ではありません。設置コストの低下、環境破壊への懸念、電気料金への影響など、複数の政策課題が重なった結果といえます。
本稿では、今回の補助廃止の背景と、その政策的な意味を整理します。

メガソーラー支援はなぜ始まったのか

太陽光発電への本格的な支援は、2012年に始まった固定価格買取制度にさかのぼります。
再生可能エネルギーの導入を一気に進めるため、発電した電気を一定価格で長期間買い取る仕組みが導入されました。

その後、2022年からは売電価格に一定の補助を上乗せする制度が追加され、地上設置型の事業用太陽光発電も対象となりました。
当時は、設備投資負担が重く、補助なしでは事業採算が合いにくい状況だったためです。

設置コスト低下という前提条件の変化

今回の廃止方針の最大の理由は、太陽光パネルの製造・設置コストが大幅に下がったことにあります。
技術革新や量産効果により、補助がなくても十分に事業として成立する水準に達したと政府は判断しました。

政策支援は、本来、立ち上げ期や過渡期に重点的に行うものです。
コスト構造が変化した後も同じ支援を続ければ、過剰な利益を生み、資源配分のゆがみを生みかねません。

今回の見直しは、再エネ政策が普及促進フェーズから、自立・選別フェーズに移行しつつあることを示しています。

環境破壊と地域トラブルの問題

メガソーラーを巡っては、自然環境との衝突も深刻化しています。
国立公園周辺や山林での開発により、景観悪化や生態系への影響、土砂災害リスクなどが各地で問題となってきました。

周辺住民との合意形成が不十分なまま進められた事例も多く、再生可能エネルギーそのものへの不信感を招いた側面もあります。
今回の政策パッケージでは、環境影響評価の対象拡大や、希少動植物の保護強化もあわせて検討されています。

単に補助をやめるだけでなく、立地と環境への規律を強める方向性が明確になっています。

再エネ賦課金と電気料金の視点

再生可能エネルギーへの支援は、電気利用者が負担する再エネ賦課金によって支えられています。
2025年度の関連予算は約4.9兆円に上り、そのうち事業用太陽光発電が約3兆円を占めています。

燃料価格高騰や物価上昇が続く中で、電気料金の負担増は家計や企業経営に直結します。
補助が不要になった分野から支援を縮小することは、賦課金抑制の観点からも避けて通れません。

エネルギー政策は、脱炭素だけでなく、負担の公平性や国民理解も同時に求められる局面に入っています。

今後の重点はどこに向かうのか

政府は、太陽光発電そのものを否定しているわけではありません。
家庭用や建物屋根への設置など、環境負荷が比較的小さく、分散型の導入については引き続き支援を行う方針です。

また、次世代技術として注目されるペロブスカイト太陽電池の開発・実装を重点支援するとしています。
エネルギー基本計画では、2040年度に電源構成の2~3割を太陽光で賄う目標も維持されています。

支援の軸足は、量の拡大から質の転換へと移りつつあります。

結論

メガソーラーへの上乗せ補助廃止は、再生可能エネルギー政策が成熟段階に入ったことを象徴しています。
コスト低下を踏まえた支援の整理、環境との調和、国民負担の抑制という複数の課題に対する現実的な対応といえるでしょう。

今後の焦点は、どこに、どのような形で再エネを導入するのかという選択の質に移ります。
再生可能エネルギーを持続可能な形で社会に定着させるためには、補助の有無以上に、制度設計と合意形成が問われる段階に入っています。

参考

・日本経済新聞「メガソーラー上乗せ補助廃止 27年度にも」(2025年12月16日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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