前回は、リファンド方式を前提とした会計処理と消費税申告の考え方を整理しました。
最終回となる第5回では、制度移行に向けて、事業者が具体的に何を準備すべきかを実務の視点から確認します。
リファンド方式への移行は、制度の理解だけで完結するものではありません。
実際の販売現場、会計処理、顧客対応まで含めて準備を進める必要があります。
制度移行のスケジュールを正確に把握する
リファンド方式は、令和8年11月1日以後に行われる免税対象物品の販売から適用されます。
それ以前の取引については現行制度が適用されるため、一定期間は制度が併存します。
事業者としては、いつから何が変わるのかを明確に整理し、販売日を基準とした制度判定を徹底することが重要です。
スケジュールの認識違いは、実務上の混乱や誤処理につながります。
システム対応の確認と準備
リファンド方式では、免税販売管理システムを前提とした情報管理が不可欠となります。
購入記録情報の登録、税関での輸出確認、返金処理までがデータで連動するためです。
事業者は、自社の販売システムやPOS、会計システムが制度に対応できるかを事前に確認する必要があります。
必要に応じて、システム改修や運用ルールの見直しを検討することが求められます。
販売現場の運用ルールの見直し
リファンド方式では、販売時に免税は行われず、課税販売が原則となります。
この点は、販売担当者にとって従来と大きく異なる点です。
購入者への説明内容、レジ処理の流れ、購入記録情報の入力方法など、現場レベルでの運用ルールを整理しておく必要があります。
特に、免税が「後日返金」であることを正確に説明できる体制づくりが重要です。
顧客対応の考え方
免税制度に対する購入者の理解は必ずしも十分とは限りません。
従来の「その場で免税」というイメージが残っている場合、誤解や不満が生じるおそれがあります。
事業者としては、購入時点で制度の仕組みを丁寧に説明し、返金手続や税関での確認が必要であることを明確に伝えることが求められます。
説明不足は、クレームやトラブルの原因になりかねません。
会計・申告実務との連携
リファンド方式では、販売時は課税売上、返金時に調整という会計処理が基本となります。
この処理を正確に行うためには、返金データを会計処理や申告実務と連動させる体制が必要です。
経理担当者や顧問税理士と連携し、返金情報の管理方法や申告時の確認手順を事前に整理しておくことが重要です。
税理士の立場からの助言ポイント
税理士としては、制度の概要説明にとどまらず、顧問先の業種や販売形態に応じた対応を助言することが求められます。
免税取引の多寡、販売チャネル、システム環境によって、影響の度合いは異なります。
また、移行期における制度併存への対応や、誤処理が生じやすいポイントについて、事前に注意喚起を行うことも重要な役割です。
結論
リファンド方式への移行は、免税制度の「理解」だけでは不十分であり、実務全体の再設計が必要となります。
スケジュール管理、システム対応、現場運用、会計・申告の連携まで含めて準備を進めることが重要です。
本シリーズを通じて、輸出物品販売場制度の改正内容と実務への影響を段階的に整理してきました。
今後は、自社や顧問先の実態に即した対応を検討し、制度移行に備えることが求められます。
参考
・東京税理士協同組合 教育情報事業配布資料
「令和7年度税制改正関係(輸出物品販売場制度・リファンド方式)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
