シニア×保険シリーズ 第4回 シニアの医療・介護保険の見直し 公的制度との重複や古い契約のまま放置するリスクを整理する

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医療技術の進歩や入院期間の短縮により、医療保険の給付条件や保障内容は過去20年で大きく変化しました。加入後長い年月が経ち、今の医療事情に合わなくなっている契約も少なくありません。さらに、介護リスクが高まる年代では、医療保障と介護保障の役割分担が重要になります。保障の重複や過剰な保険料負担を避けるためにも、シニア世代では医療・介護保険を総合的に見直すタイミングが訪れます。

この記事では、医療・介護保険の見直しに際して押さえておきたいポイントを整理し、古い契約の注意点、公的制度との関係、過不足のない保障設計の考え方について解説します。

1. 古い医療保険が「給付の対象外」になりやすい理由

医療保険を見直す最大の理由は、近年の医療の変化です。特に以下の点が契約とのミスマッチを生みます。

■ 入院期間が劇的に短くなった

厚生労働省の統計でも、入院の平均日数は年々短縮しています。
その結果、次のような契約は給付が受けられない可能性があります。

  • 「5日目から給付」
  • 「20日以上の入院で1日目から給付」
  • 「長期入院を前提とした高額給付」

短期入院が主流となった今では、これらの条件が実態に合わず、支払い対象外となるケースが増えています。

■ 医療技術の進歩で治療方法が変化した

  • 日帰り手術の増加
  • 内視鏡手術の普及
  • 先進医療の種類が増加

古い契約では、これら新しい医療に対応していないことがあります。


2. シニア世代は「保険料負担が続く」ことが負担になりやすい

60歳以降は収入が減少するケースが増え、保険料支払いの負担が相対的に大きくなります。

■ よくある負担増の例

  • 若い頃に加入した特約の量が多い
  • 終身保険に医療特約が付いたまま
  • がん保険や三大疾病保険を複数契約して重複している
  • 若い頃に加入した定期保険部分が保険料上昇期に突入している

見直しの目的は「必要な保障は残し、不要な部分を整理する」ことにあります。


3. 終身保険の医療特約の扱いは慎重に

終身保険に医療特約を付けているケースは多く、見直しの際に迷いやすいポイントです。

■ 特約の見直しで注意すべきこと

  • 終身保険が「お宝保険」の可能性
    (予定利率が高い時期に契約したもので、解約すると不利になる)
  • 特約のみを切り離せるかどうかは保険会社によって異なる
  • 特約を解約すると保障が大幅に減る場合がある

メリット・デメリットを慎重に比較し、解約返戻金の動きや死亡保障とのバランスを確認する必要があります。


4. 介護保険の民間商品をどう位置付けるか

シニア世代では介護状態になるリスクが高まるため、介護保険の関心が自然と高まります。ただし、民間の介護保険商品には特徴があり、公的介護保険との違いを理解したうえで選ぶことが重要です。

■ 公的介護保険の特徴

  • 40歳から加入(40歳〜64歳は特定疾病)
  • 要介護認定の度合いによってサービスが受けられる
  • 保険料は所得によって変動
  • 利用者負担は原則1〜3割

一方で、民間の介護保険は次のような役割を果たします。

■ 民間介護保険の役割

  • 一時金または年金として受給できる
  • 要介護状態に備えた現金確保
  • 介護費用の自己負担分を補う
  • 自宅改修・家族の介護負担軽減に使いやすい

ただし、給付の条件(認定基準)は商品ごとに異なるため、給付条件が厳しすぎないかの確認が必要です。


5. 医療保険と介護保険の「重複」と「過不足」を見極める

シニア世代の見直しポイントは、医療・介護・死亡保障の三つのバランスを整えることです。

■ ありがちな重複例

  • がん保険を複数契約し、診断一時金が重複
  • 三大疾病保険と介護保険の給付条件が似ている
  • 入院日額を過大に設定している
  • 先進医療の保障が複数契約で重複している

■ 過剰保障のチェック方法

  • 「入院日額は5,000円で十分か」
  • 「診断一時金はいくら必要か」
  • 「介護が必要になった場合の自己負担額はいくらか」

ライフスタイル、家計、介護リスクを総合して考えることが必要です。


6. 60代、70代での見直しのタイミング

医療・介護保険の見直しには適したタイミングがあります。

■ 60代前半

  • 比較的保険料が抑えられる
  • 新しい商品への入り直しがしやすい
  • 働いている期間なら医療費負担も想定しやすい

■ 70代

  • 保険料が急増する
  • 制限が増え、加入できる商品が限られる
  • 既契約の特約整理が中心になる

80代でも加入できる商品は増えてきましたが、保険料負担とのバランスを慎重に検討する必要があります。


7. 医療費の公的支援も忘れずに

民間保険を過剰に増やす必要がない理由のひとつに、公的支援制度の存在があります。

■ 医療費支援の例

  • 高額療養費制度
  • 高齢受給者医療制度
  • 介護保険サービスの公的支援
  • 医療費控除

これらの制度を前提に民間保険の必要性を判断することで、過剰な保険料負担を避けられます。


結論

医療技術の進歩や入院期間の短縮により、古い医療保険では現在の医療環境に対応できない場面が増えています。また、シニア世代では保険料負担が重くなりやすいため、医療・介護保障を整理し、公的制度との役割分担を明確にすることが重要です。終身保険の特約の扱いや介護保険の位置付けは慎重な検討が必要であり、特に60代は見直しの適期です。

医療保障・介護保障・死亡保障の三つを総合的に考え、過不足のない設計を行うことで、老後の健康リスクに備えながら無理のない保険料負担を実現できます。家族とも情報を共有し、将来の介護や医療費に備える体制を整えることが大切です。


参考

厚生労働省 医療・介護関連統計
生命保険文化センター 医療保障・介護保障に関する調査
日本経済新聞(医療・介護保険関連記事 2024〜2025年)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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