年末調整や確定申告の準備が進むこの季節は、保険契約の内容を見直す好機です。長く加入している生命保険は、契約内容が複雑で、思い込みと実際の保障が一致していないことも珍しくありません。特にシニア世代では、保険金の受け取り方や、加入時とは状況が変わっている点を確認しておかないと、いざという場面で期待とのズレが生まれるケースがあります。契約の整理や家族との共有は、トラブル防止にもつながります。
以下では、シニア世代の保険を棚卸しする際に押さえておきたい視点と、見落としがちなポイントについて整理します。
1. 「思っていたほど保険金が出ない」典型例から学ぶ
長年加入していた保険が、いざという時に十分な保険金を支払わないことは珍しくありません。その代表例が「定期付終身保険」です。契約時には大きな保険金額が示されていても、実際には大部分が一定年齢で消滅する定期部分で構成されていることがあります。
たとえば、総額3000万円の保険契約でも、定期部分が65歳で終了すれば、残るのは主契約の終身保険のみというケースです。保障が必要な期間に特約が切れてしまうと、想定より大幅に少ない保険金しか受け取れません。
こうした事態を避けるには、
- 主契約と特約の内訳
- 特約の保険期間
- 保険料の支払い期間
を必ず整理しておくことが重要です。
特に60〜70代では、加入当初の目的(子育て・住宅ローン返済など)を終えていることも多く、保険金額が現状に合っていないケースが目立ちます。
2. 死亡保障を見直す際のポイント
子どもが独立した後は、大きな死亡保障が不要になることがあります。保険料負担が重くなってきた場合には、減額や解約も選択肢になります。
死亡保障の見直し方の基本
- 定期特約の有無と金額を確認する
災害割増特約や傷害特約など、現在不要な特約が付いている場合があります。 - 終身部分が“お宝保険”か確認する
予定利率が高い時期に契約した終身保険は、解約や転換をすると不利になることがあります。 - 葬儀費用の備えを検討する
葬儀費用は一般に200〜300万円とされ、終身部分で不足する場合にはシンプルな死亡保険を追加する方法もあります。
預貯金でまかなう選択肢もありますが、相続発生直後は口座から資金を引き出すまでに時間がかかることがあり、保険金の「支払いの早さ」がメリットになる場面があります。
3. 医療保険は「古い契約ほど要注意」
医療技術の進歩と短期入院の増加を背景に、古い医療保険では給付条件が現状に合わなくなっていることがあります。
よくある例として、
- 「入院5日目から給付」
- 「20日以上の入院で1日目から給付」
といった条件があり、短期入院が主流になった今では給付対象外となるケースが増えています。
60代のうちに新しい医療保険へ見直すと、比較的負担の少ない保険料で加入できる場合があります。
ただし、終身保険に付けている医療特約を見直す場合には、特約だけの切り離しや転換に注意し、解約によるメリット・デメリットを慎重に比較したいところです。
4. 名義と受取人の確認は必須
生命保険には、
- 契約者
- 被保険者
- 受取人
の三者が存在します。特に重要なのが受取人です。
長年見直していない結果、
- 受取人がすでに亡くなっている
- 離婚した元配偶者が受取人のまま
といったケースがあります。受取人が故人の場合、相続人全員への支払いになり、手続きが煩雑になることがあります。
相続対策としての受取人設定
相続時の代償金の支払いに保険金を活用する方法もあります。
例:次男に自宅を相続させ、長男には代償金を支払う必要がある場合
→ 次男を受取人に設定し保険金を代償金に充てる、という設計が可能です。
5. 認知症対策としての「代理請求制度」
医療保険や給付金の請求手続きは、通常本人が行います。そのため、本人が認知症になると手続きができず、家族でも契約内容の確認や給付請求ができなくなります。
有効な対策が、次の二つです。
指定代理請求制度
事前に代理人を登録しておくことで、判断能力が低下した場合でも給付金を請求できます。
契約者代理制度
給付請求だけでなく、契約内容の照会や手続き、解約まで代理人が行える制度を導入する保険会社もあります。
いずれも無料で利用できることが多く、早めに登録しておくメリットが大きい制度です。
6. 契約を見失わないために
契約がどこにあるか分からなくなる問題もよくあります。
生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用すれば、契約の有無を確認できますが、来年4月以降は手数料が値上がりします。
定期的な棚卸しの際に、
- 契約一覧を紙やデジタルで残す
- 家族に共有する
などの工夫をしておくと、将来の手続きを円滑に進められます。
結論
シニア世代の保険見直しは、保険料負担の軽減だけでなく、将来のトラブル回避や相続設計にも直結します。特に「定期付終身保険の特約終了」「古い医療保険の条件」「受取人の未更新」「認知症による手続き不能」は、実際に多くの相談が寄せられるポイントです。
早い段階で契約内容を整理し、必要な修正や家族との情報共有を進めることで、将来の不安を減らすことができます。棚卸しは一度で終わりではなく、ライフステージの変化に応じて定期的に行うことが望ましい取り組みです。
参考
日本経済新聞「シニアの保険、早め棚卸し」(2025年12月6日 朝刊)ほか
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
