コメ作りはなぜ若い世代に引き継がれないのか――就農初期投資1億円が示す現実

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コメの価格上昇が家計を直撃しています。
その背景として語られることが多いのが、担い手不足や高齢化ですが、実際の生産現場ではどのような課題があるのでしょうか。

本稿では、若い世代がコメ作りに挑む現場の実情を手がかりに、就農のハードルと米価高騰の構造的要因について整理します。


稲作経営の出発点は「1億円」

稲作で生計を立てるためには、想像以上の初期投資が必要になります。
大規模経営を前提とすると、トラクター、田植機、コンバイン、乾燥調製施設など、主要な農業機械だけで数千万円規模になります。

実際、独立直後の若手農家が、経営基盤を整えるために約1億円の融資を申請したケースもあります。
しかも、この金額には農地取得費用は含まれていません。

稲作は「土地があれば始められる」というイメージを持たれがちですが、実際には高額な設備投資が前提となる資本集約型産業だと言えます。


農地は「余っている」のに簡単ではない

日本では高齢化により、農地を手放す農家が増えています。
一見すると、若い世代が農地を引き継いで規模拡大しやすい環境に見えます。

しかし現実には、農地は細切れに点在していることが多く、効率的な経営を妨げる要因になっています。
複数の圃場を移動するための時間や燃料費、大型農機の運搬コストは、すべて生産コストとして跳ね返ります。

「面積が増えれば効率化できる」とは限らないのが、稲作経営の難しさです。


高齢化が進む農家構造

現在、日本のコメ農家はこの20年で大幅に減少し、70歳以上が多数を占める状況です。
長年地域を支えてきた農家が「自分の代で終わり」と語る場面も珍しくありません。

農地を守り続けること自体が難しくなり、若い世代に引き継ぐことが急務とされていますが、その受け皿となる若手農家には大きな負担がのしかかっています。


温暖化と管理負担の増大

近年は気候変動の影響も無視できません。
高温障害や害虫被害、水路や用排水の管理など、従来以上に手間とコストがかかるようになっています。

これらはすべて、農家個人の努力で吸収されてきましたが、限界に近づいているのが実情です。


米価は「高い」のか「必然」なのか

消費者の立場から見ると、米価の上昇は負担増として映ります。
しかし、生産現場に目を向けると、その価格は必ずしも「過剰」ではありません。

多額の初期投資、分散した農地、増え続ける管理コスト。
これらを前提に経営が成り立つ水準として、現在の米価が形成されている側面があります。


結論

若い世代がコメ作りに挑戦するには、情熱だけでは乗り越えられない壁があります。
初期投資の重さ、構造的な非効率、気候変動リスク――これらを踏まえなければ、担い手不足は解消しません。

米価をどう捉えるかは、単なる物価の問題ではなく、日本の食料生産をどう維持するかという問いでもあります。
生産現場の実情を知ることが、議論の出発点になるはずです。


参考

日本経済新聞「〈NIKKEI Film〉就農の初期投資1億円 コメ作りに挑んだ若き農家」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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