【第5回】中古住宅と新築住宅の税制比較 住宅ローン減税・登録免許税・固定資産税の違いを総整理

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住宅を購入するとき、多くの方が見落としがちなのが「税金の違い」です。新築と中古では、住宅ローン減税の適用条件や控除額、登録免許税の軽減措置、固定資産税の特例などに違いがあります。さらに2026年度以降の住宅ローン減税の見直し(5年延長・床面積の緩和・中古支援の拡大)により、中古と新築の税制メリットの差は縮まる方向にあります。本稿では、最新の制度動向も踏まえながら、税制を中心に中古住宅と新築住宅を比較します。

1 住宅ローン減税の比較

住宅ローン減税は最大の税制優遇と言える制度で、購入後の家計に与える影響は大きいです。

(1)控除額の大枠は中古も新築も同じ

  • 控除率:年末ローン残高の0.7%
  • 控除期間:新築は13年、中古は現行10年(延長検討中)
  • 床面積:今後は原則40㎡以上に緩和

これまで中古は控除期間が短く不利でしたが、2026年度以降は期間延長が検討されており、差が縮まる流れです。


(2)借入限度額の違い

新築住宅のローン限度額は、住宅の性能によって上限が変わります。

■ 新築(現行)

  • 認定住宅(長期優良住宅など):5,000万円
  • ZEH水準等:4,500万円
  • 省エネ基準適合住宅:4,000万円
  • 一般住宅:3,000万円

■ 中古(現行)

  • 一般的に 2,000万〜3,000万円
  • 性能に応じた大きな差はなし

■ 今後の見直し(政府検討案)

  • 中古の借入限度額を引き上げる方向
  • 中古にも子育て・若年世帯の上乗せ限度額を適用する案

結果として、住宅ローン減税は
「新築が圧倒的に有利」という時代から、両者の差がほぼなくなる時代へ移行
しています。


(3)省エネ性能による違い

新築住宅は 2030年までに、省エネ基準より厳しい性能を満たさないと減税対象外にする方向 と報じられています。

■ 新築

  • 性能が低いと減税の対象外
  • 将来は「高性能の新築のみ」優遇

■ 中古

  • 現行は性能基準の区分が緩やか
  • 中古×リノベでも減税対象に
  • 「性能向上リフォーム」への支援強化が続く見込み

結果として、
性能で線引きされるのは主に新築。中古は性能に応じて柔軟に改善可能。


2 登録免許税の比較

登録免許税(登記費用)は、新築・中古で軽減措置の内容に違いがあります。

(1)土地・建物の所有権保存登記・移転登記

  • 新築(保存登記):軽減税率あり
  • 中古(移転登記):軽減税率が適用される場合が多い
    ※優良住宅の場合はさらに軽減

具体的には、

  • 鉄筋コンクリート造:0.4% → 軽減で0.15%
  • 木造:2.0% → 軽減で0.4%
    などの軽減が一般的です。

中古住宅でも、長期優良住宅化リフォームを行うと軽減対象になる場合があります。


3 不動産取得税の比較

不動産取得税は中古・新築ともに「住宅用軽減措置」があり、
建物の評価額から1,200万円を控除する仕組み
が広く使われています。

中古住宅の場合は、

  • 築年数に応じて評価額が低い
    → 税額が結果的に小さくなる
    というメリットがあります。

4 固定資産税の比較(大きな差が出るポイント)

固定資産税は毎年支払う税金で、長期的な負担に差が出ます。

■ 新築住宅

  • 新築戸建:3年間 1/2
  • 新築マンション:5年間 1/2
  • 認定長期優良住宅はさらに2年間延長(最大7年)

新築は固定資産税の軽減期間が長い ため、初期のランニングコストは低く抑えられます。

■ 中古住宅

  • 軽減はない
  • ただし建物評価額が低いため税額は総じて低め

実際には、
中古は評価額が安いため“税額そのもの”が小さい
という構造があります。


5 税制面で中古と新築はどちらが得か

結論からいえば、次のように整理できます。

■ 新築が税制で有利な点

  • 固定資産税の軽減期間が長い
  • 長期優良住宅の税優遇が豊富
  • 性能の高さでローン減税の限度額が大きくなることが多い

■ 中古が税制で不利な点

  • 固定資産税の軽減がない(ただし評価額は小さい)
  • ローン減税の限度額が小さい(ただし引き上げ検討中)

■ 中古が逆に有利な点

  • 建物評価額が低いので固定資産税はそもそも安い
  • 性能向上リフォームで新築に近い税優遇を受けられる
  • 借入額が少なくなるため、控除の枠に頼る必要が小さい

総合すると、
税制メリットは新築優位だが、総額負担で見ると中古でも十分有利
というのが現状です。


結論

中古住宅と新築住宅の税制は、確かに新築のほうが有利な部分が多いものの、2026年度以降の税制改正では中古支援が大幅に強まる見込みです。

特に、

  • 住宅ローン減税の床面積要件緩和(40㎡)
  • 中古の借入限度額引き上げ案
  • 子育て・若年夫婦への上乗せを中古にも適用
    といった動きは、今後中古住宅が税制面でも“選びやすい住宅”になっていくことを示しています。

住宅を購入する際は、

  • 税制によるメリット
  • 建物価格と維持費
  • 将来の資産価値
    の3つを総合的に比較し、ライフプランに合った住宅を選ぶことが最も重要です。

参考

住宅ローン減税5年延長 政府調整、中古支援手厚く(日本経済新聞 2025年12月3日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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