【第3回】住宅性能の比較 省エネ・耐震・断熱・長期優良住宅の視点から読み解く

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住まい選びにおいて「性能」をどこまで重視するべきかは、大きな判断材料です。省エネ、耐震、断熱、耐久性、そして長期優良住宅基準など、住宅の性能をめぐる基準は年々高度化しています。新築住宅は最新基準を満たす一方、中古住宅もリフォームや性能向上工事により着実に進化しています。今回は、中古住宅と新築住宅を性能面から整理し、どちらがどの点で優れているのかを比較します。

1 省エネ性能の比較

省エネ性能は光熱費だけでなく、将来の資産価値にも直結する重要な要素です。

(1)新築住宅の省エネ性能

2025年4月から「省エネ基準適合」が新築の義務化となりました。
その背景には、

  • 脱炭素政策
  • 住宅のエネルギー性能向上
  • 将来の光熱費負担の削減
    といった目的があります。

さらに政府は2030年頃を目標に、
“省エネ基準より厳しい基準を満たさない新築はローン減税の対象外”
とする方向で検討しており、新築の性能基準は今後も上昇します。

(2)中古住宅の省エネ性能

中古住宅は築年数により性能差が大きくなります。

  • 築40年:断熱材がない住宅が多い
  • 築20年前後:ある程度断熱は確保されている
  • 築10年以内:現行の省エネ基準に近い性能

ただし、中古でも性能向上リフォームが普及しつつあります。
例:

  • 断熱材の追加
  • 高性能窓の導入
  • 高効率給湯器(エコキュートなど)
  • 太陽光パネルの後付け

近年は「中古+性能向上リノベ」という選択肢が市民権を得ており、リノベ済み物件では新築相当の性能を持つ物件も増えています。


2 耐震性能の比較

日本の住宅にとって最重要ともいえる耐震性能。中古と新築では法律上の基準が変わってきました。

(1)新築は最新の耐震基準

現行の耐震基準は2000年基準(新耐震基準の補強版)です。
新築は必ずこの基準を満たすため、耐震性能は基本的に高い水準です。

(2)中古は“築年数”で耐震性能が大きく変わる

分類すると次の3段階です。

  • 1981年以前(旧耐震):倒壊リスクが高い
  • 1981〜1999年(新耐震):震度6〜7で倒壊しない設計
  • 2000年以降(改正新耐震):柱・壁量・基礎の基準が強化

中古を検討する場合、

  • 築年数
  • 耐震診断の有無
  • 基礎の状況
  • 施工会社
    といった情報確認が必須です。

なお、耐震補強の工事は費用がかかりますが、補強次第では新築並みの強度まで底上げが可能です。


3 断熱・気密性能の比較

快適な住環境に直結する断熱・気密性能は、性能差が出やすい分野です。

■ 新築

  • 高性能断熱材
  • 樹脂サッシ+Low-Eガラス
  • 気密測定の実施
    といった仕様が一般的になっています。特に近年は「ZEH(ゼロエネルギーハウス)」の普及により性能の底上げが進んでいます。

■ 中古

築年数によるバラつきが大きいものの、

  • 二重サッシ
  • 断熱リフォーム
  • 玄関ドアの交換
    などピンポイントの補強で性能が大幅に改善します。

マンションでは構造上の気密性が高いため、窓の交換による改善効果は絶大です。


4 長期優良住宅の視点

長期優良住宅は、耐震・省エネ・維持管理・劣化対策などが総合的に高い基準で評価される制度です。

■ 新築の長期優良住宅

  • 新築の申請がしやすく、普及率は拡大
  • バリアフリー設計など将来対応も充実
  • 税制優遇が多い(登録免許税の軽減など)

■ 中古と長期優良住宅

中古では「長期優良住宅化リフォーム」という制度があり、

  • 耐震
  • 断熱
  • 維持管理
    などをまとめて改善し、長期優良住宅に近い性能へ更新可能です。

この制度は補助金が使えることが多く、コストを抑えながら性能向上できる点がメリットです。


5 性能の方向性まとめ

性能面だけを見ると、傾向は次の通りです。

■ 新築が優れる点

  • 省エネ性能が標準で高い
  • 最新の耐震基準
  • 気密・断熱性能が高く、快適性が安定
  • 維持管理計画を立てやすい

■ 中古が追いついている点

  • 性能向上リフォームで新築同等の水準に可能
  • 省エネ改修で光熱費削減
  • 耐震補強で安心を確保
  • 補助金の活用余地が大きい

性能で新築が総合的に優位なのは確かですが、中古も「リノベ・補助金・性能診断」を前提にすれば十分な競争力があります。


結論

住宅性能においては、基本的には「新築が高性能」であると言えます。しかし、中古住宅は性能の“底上げ”が可能であり、リノベーションや補助金制度を活用することで、新築と大差ない水準を実現できます。

住まい選びでは、

  • 光熱費の将来負担
  • 耐震性の安心
  • 断熱・気密の快適性
  • 建物の寿命
  • 補助金や税制優遇
    といった複数の評価軸を踏まえて判断する必要があります。

特にこれからの住宅は、性能の高さが資産価値に直結する時代に入ります。中古を検討する場合は「性能向上リノベ」まで含めて選択肢を広げることが賢明です。


参考

住宅ローン減税5年延長 政府調整、中古支援手厚く(日本経済新聞 2025年12月3日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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