令和7年度税制改正により、輸出物品販売場制度は大きな転換点を迎えました。
令和8年11月から導入されるリファンド方式は、免税の仕組みを根本から見直す内容であり、販売実務や会計処理、消費税申告に広範な影響を及ぼします。
本稿は、これまでのシリーズ全5回の内容を横断的に整理し、制度の全体像と実務上の要点を一つにまとめた保存版です。
制度理解の再確認や、実務対応のチェック用として活用できることを目的としています。
制度改正の核心は何か
今回の改正の本質は、免税の成立時点を「販売時」から「輸出確認後」へ移行させた点にあります。
従来は、販売時に免税が成立し、その後の確認は事後的な管理に委ねられていました。
リファンド方式では、購入時は課税販売とし、実際に国外へ持ち出されたことが確認された後に、消費税相当額を返金します。
これにより、免税の適用と輸出の実態が制度上も一致する構造となりました。
免税対象物品と購入者要件の整理
リファンド方式への移行に伴い、免税対象物品の区分が見直されました。
従来の一般物品と消耗品の区分は廃止され、免税対象物品は一体的に整理されています。
免税購入者の要件自体は大きく変わっていませんが、確認方法は電子化を前提とする形に整理されました。
旅券情報等による確認結果や購入記録情報は、免税販売管理システムを通じて管理されます。
実務フローの全体像
リファンド方式における実務フローは、以下のように整理できます。
まず、販売時点では消費税を含めた価格で課税販売を行います。
同時に、免税対象となり得る取引について購入記録情報を作成し、システムに登録します。
購入者は出国時に税関で輸出確認を受け、確認が完了した取引について消費税相当額の返金が行われます。
輸出確認が行われなかった場合には、返金は行われず、課税販売として処理が確定します。
会計処理と消費税申告の基本的な考え方
会計処理の基本は、「販売時は課税売上、返金時に調整」という考え方です。
販売時点で免税売上として処理することはありません。
返金が行われた場合には、その返金内容を踏まえて売上や消費税額の調整を行います。
販売と返金が異なる課税期間にまたがる場合には、どの期間で調整するかを整理しておく必要があります。
消費税申告においても、返金データと申告内容の整合性を確保することが重要になります。
移行期における最大の注意点
リファンド方式は、令和8年11月1日以後に行われる販売から適用されます。
それ以前の取引には現行制度が適用されるため、一定期間は制度が併存します。
制度の適用は販売日を基準に判断されるため、販売日と出国日が異なる取引についても、取扱いを誤らないよう注意が必要です。
移行期は、実務上のミスが最も起こりやすい時期といえます。
事業者が準備すべき実務対応
事業者は、制度理解に加えて、実務対応の準備を進める必要があります。
具体的には、以下の点が重要になります。
制度移行スケジュールの正確な把握、免税販売管理システムへの対応、販売現場での運用ルールの見直し、顧客への説明方法の整理、会計・申告実務との連携です。
これらを個別に対応するのではなく、全体として整理することが求められます。
税理士の役割
税理士は、制度の説明役にとどまらず、顧問先の実態に応じた対応を助言する役割を担います。
免税取引の有無や取引規模、システム環境によって影響は異なります。
特に、移行期における制度併存への対応や、誤処理が生じやすいポイントについて、事前に整理し助言することが重要です。
結論
令和7年度税制改正によるリファンド方式への移行は、輸出物品販売場制度の根本的な再設計です。
免税の仕組みは簡素化される一方で、事業者には新たな実務管理が求められます。
本シリーズで整理した内容を基に、制度の全体像を正しく理解し、自社や顧問先に合った実務対応を検討することが重要です。
制度移行を「単なる改正対応」で終わらせず、実務を見直す機会として活用することが、今後の安定した運用につながります。
参考
・東京税理士協同組合 教育情報事業配布資料
「令和7年度税制改正関係(輸出物品販売場制度・リファンド方式)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
